部下の本音を引き出す方法と生産性向上の戦略
松尾淳一の組織運営ラボラトリー
第30話「役員の悩み|部下が何を考えているか分からない」
2023年11月更新
今回のお悩み
会社役員です。現場に出ていた時は思わなかったのですが、役員になってから 部下が何を考えているのかわからなくなりました。この間、何か悩んでいそうな部下がいたので直接声をかけたら全然大丈夫ですと言われました。従業員の本音をなるべく直接聞きたいと思うのですが、 今の立場になるとそれはもう難しいのでしょうか。
鈴木健一
この質問はですね、コンサルの営業とかでお客様とお話させていただく時に、よくいただく質問だったりもするんです。いわゆる部下が何を考えてるのかっていうことを、直属の上司が適切にフィードバックしてないんじゃないかということを、疑問に持たれてる役員の方って結構いらっしゃるようです。かと言って、自分で聞きに行っても、結局何も聞けなかったりすると…。この辺りを内省して、下の人達も何を考えてるのか分かってて、組織であったり、制度であったりを打ち出していきたいという風に思ってらっしゃるような、責任感の強い役員の方がよくこういったところお悩みだったりするんですね。
松尾淳一
まあ、そうですよね。
鈴木さん、おはようございます。
鈴木健一
おはようございます。
松尾淳一
さようなら。
鈴木健一
さよなら。
松尾淳一
って言うじゃないですか。
おはようには、おはよう。挨拶って、こう来たらこう返す。のような。
鈴木健一
はい。
松尾淳一
だと思うんですよ。
例えば、頑張ってる?って言われたら、頑張ってます。大丈夫?って言われたら、大丈夫ですって。
これも、挨拶みたいなもんでそう返すよねっていうことだと思うんですよ。特に関係性ができてる人に、例えば、頑張ってる?って聞かれたら、「一緒に決めたこのお客さんが今こうなってるんで、そこを頑張ってます。」って言えると思うんですけど、全く関係ない人、例えば他の会社の人とか、 大学が一緒だった人とかに、最近どう?。って聞かれたら。おお、頑張ってるよ、って言いますよね?そういうことだと思う。
挨拶レベルの問いしか投げれてないから、そういう返答しか来ない。挨拶レベルの質問になっちゃってるっていうこじゃないですか。日常のコミュニケーションの中では、本音は言えないし言わないですよ。
例えば鈴木さんが悩みを抱えてるところにさらっと突然現れた上司が「鈴木さん、最近大丈夫か?」って言えば「はい、大丈夫です。」って言うじゃないですか。突然来て、突然聞かれたら、頑張ってますって言うしかないじゃないですか。
鈴木健一
はい
松尾淳一
頑張ってるって言いたくなっちゃう。いや、実は…なんて言えないですよね。
鈴木健一
言えないですね。
松尾淳一
通りすがりの挨拶みたいなもんだから。役員さんと時間があってその人に、いや、実はこういうことが困ってますなんて言えない。
鈴木健一
言えないですね。
松尾淳一
だから、そのアプローチをどうしていくのか。大前提として、ある程度距離がある人間関係での日常のコミュニケーションの中では、本音は言わないし、言えない。これが大前提なので、もし本当に本音を聞きたいということがあるんだったら、 やっぱりフィードバックのセッションというか時間をちゃんと作っていくってことをやっていかなきゃいけないですよね。
例えば2ヶ月に1回とか、1ヶ月に1回でもいいでしょう。もう少しスパンは長くてもいいと思うんですけど、 例えば役員の方とのone on oneの時間、1対1の時間を取るとか、そういったことを仕組みとして考えていかないと本音は言わないですよ。例えば鈴木さんに想像してほしいんですけど、月に1回、役員さんとone on oneの時間があって、そこで最近、現場の仕事もすごく忙しくなって、 今まで1つの現場だったけど、今2つの現場を並行して頼まれるっていうミッションを上司が与えられてる、っていう時の進め方とか、何か困ってることあるか?と面談室なんかで聞かれたら答えることができるじゃないですか。そういうこと困ってるんだねっていう話ができる。だから場所ですよね。
そういう場所とその仕組み上の時間をちゃんと取ってあげないといけない。でないと言えない・言わないになってしまうんだと思うんですよ。挨拶レベルになってしまう。僕は15分でもいいと思ってるんですけど、面談のようなone on oneの時間があって、その時間に役員クラスの方に「実はその2つの現場の中でどっちを優先順位高くしていいのかわかんなくて、その辺のアドバイス欲しいです。」って伝えた時に役員の方からのフィードバックがあり、その辺り、部長に僕からもちょっと話してみるよ、みたいな感じだったら、ありがとうございます。ってなるじゃないですか。で、後日職場で会った時に、どう?大丈夫?って聞かれたら答えれますよね。
「この前はありがとうございました。その後、部長さんとも話し合って、その辺整理できてる感じなんで、今大丈夫です。」ってなると思うんです。だから、フィードバックのセッションを持つ時間と場所っていうのを設定していく。役員さんがそこに 介入したいのであれば、ですけどね。
鈴木健一
これ、例えば何百人もいる会社だったりするとはいえ、全部聞くっていうのは無理ですよね。
松尾淳一
ですよね。やっぱりそうなった時のフィードバックっていうのは、ある程度、課長なり、現場の方がいらっしゃるんだったら、現場の方に対しての上長、 課長とか部長っていう方が、やっぱりそういうようなフィードバックの時間をちゃんと作って、やっぱりやらなきゃいけないですよね。レポートなり報告、気付きっていうことを役員にあげるような仕組みにしていかないといけない。
おそらく考えていくと報告などの後者なんですよ。じゃあなぜ役員の方が現場に足を運んで首を突っ込もうかって言ったら、わかんないからですよ。現場の声が課長や部長を通して上に上がってこないから、じゃあ直接自分把握しに行こうって話になる。
すなわち、課長や部長のそのフィードバックと、課長や部長のフィードバックっていうのは機能していない。もしくは、そこでフィードバックしてることが会社、上司に 報告されるっていう流れになっていないから、心配で現場に足運んで直接確認をするっていうような、場当たり的な対応になってしまってる。
鈴木健一
メンバーからしたら、会社役員の方が月に1回来られたとしても、普段何されてる方がわからないから、急に質問されても何を答えていいか分からないっていうのもあります。
松尾淳一
ですよね。直接昔、自分が接してた現場とかだったらまだしも、人数が多くなって顔ぐらいしか知らないですっていう役員の人とかが来て、大丈夫かと聞かれても言わないでしょう。逆にそういう場って、頑張ってるアピールする場所だから、頑張ってます、大丈夫ですっていう場所ってことだから。ですので1つは、そのフィードバックの時間と場所っていうのちゃんと定例化して、その中での報告の仕組みを作っていくことが1つだと思います。
鈴木健一
えぇ。
松尾淳一
あとはもう1つあります。外部を使う。
鈴木健一
外部の活用の仕方だと、どういうところですか。
松尾淳一
例えば、その現場の社員さんとかの困り事、そういったところのヒアリングっていうのを外部の会社と連携させてもらって、そういうところをお願いする。客観的にね。
鈴木健一
こういったお仕事って、人事の方がやってらっしゃったりするようなケースもあります。それでもこう、なかなか回ってるかって言ったらそうじゃなさそうな人が多いので、やっぱりそういったところは外部の方が。
松尾淳一
客観的にね。そうですよね。例えば我々、鈴木さんもそういう現場の方にヒアリングされることがありますよね。
鈴木健一
はい。
松尾淳一
色々と言いづらいこと、言いにくいことも含めて話をしてねって話はすると思うんですけど、一方で言い過ぎたなと思うことは言ってくれ、 これは会社には言いませんっていうのもあるわけじゃないですか。その部分がやっぱ外部のメリットとしてありますよね。自分の部下のなんとかってやつがいるんですけど、実は一緒に仕事したくないと思ってて…とか、家で嫁と揉めてて…とか。なんか最近だと、もう仕事辞めて家のこと手伝ってすごい言うんですよ。みたいなこととかは、社内の人には言いづらい。
鈴木健一
言いづらいですね。
松尾淳一
いくら人事の人だと言って、「我々は口が固いです。」って言っても、いや、会社じゃんっていう。自分のこと知ってるじゃんってなりますよね。人事査定みたいのありそうですしね。人事は直接評価しない、ということかもしれない。何かしらの時に、その情報っていうのは社内で共有される危険性はあるよねっていうことがあるでしょうから。やっぱ外部を使うっていうことがすごく大事。
鈴木健一
そうですね。もちろん内製してできるようにするのも大事ですが、そういった客観性から外部も一緒に使うってことはやっぱり重要だと思います。
松尾淳一
何もかもが内製化しようっていうのは、方向性としては正しいと思う。
その自分の会社だけで最高のパフォーマンスを上げていくためのすべての仕組みやオペレーションを 自社だけで回すっていうのは、もう今は不可能な時代。極端な話言うと、ホームページとかだって外注するわけじゃないですか。もちろん自社で作れた方がいいですよ。でも、ほとんどの会社が専門業者にお任せするわけじゃないですか。例えば、 あとは事務所の机とかも、当然ですけど、そういう業者さんから買うわけじゃないですか。自分たちで作れるんだったら作った方がいいっていう発想かもしれない、作らないですよね。手作りで。
鈴木健一
はい。
松尾淳一
山に入って木を切って机作るなんてしないじゃないですか。
鈴木健一
内製とはいえ(笑)
松尾淳一
内製化っていう言葉の中に、自分たちでやった方が良い、会社の財産を増やした方がいいっていうことはわかるんですけど、 何もかも内製化していこうぜっていうアプローチがやっぱり間違ってて。逆に言うと、外製化していくっていうことを仕組み化した方がいいです。これは外に任せるんだっていうことをきちっと決めるということも1つだと思う。だから、結局それを決めてないから、この会社さんこうなってるよねって、思っちゃったりするんですよね。自分たちでそれくらいできるよって思ってるけど、できてないじゃんみたいな。
鈴木健一
そうですね。何を内製化し、何を外でお任せするかっていうことを決めるっていうことが非常に大事ですよね。
松尾淳一
それにやっぱり生産性じゃないですか。生産性を軸にやっていく。
日常のコミュニケーション大事だし、上司が部下をone on oneできたらいいって、僕はそう思うんですよ。うん、思うんだけども、そのone on oneっていうのが、現場の仕事を回すとかね、 生産性高めていくために、その面談の時間ってのが非常にリスキーであるとかになるんだったら、もうそれは外注化した方がいいですよ。要は、その専門家、プロに任せた方がいいですよ。で、期待、成果っていうのをちゃんとコミットして、こういう形でお願いしたいっていうことで契約を交わした方がよっぽど早い。その方が役員さんのストレスもよっぽど下がる。
鈴木健一
なるほど。はい、お時間もいいところになりましたので、この辺で松尾先生、ありがとうございました。
今回の主なポイント
- 定例のフィードバックセッションの導入:
定期的に一対一の時間を設け、部下との対話の場を作ることで、部下が直面している課題や悩みを引き出しやすくします。 - 外部の助けの活用:
会社内でのフィードバックが難しい場合、外部の専門家やコンサルタントを活用して、客観的な視点から部下の声を聞き出すことが提案されています。 - 生産性向上のための業務の外注化:
部下との面談が生産性向上に直結しない場合、それを外部に委託して専門家に任せることを検討するべきだと述べられています。 - 内製化と外製化のバランス:
何を内製化し、何を外部に任せるかを明確にし、そのバランスを保つことが大切だとされています。
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